肛門の腫瘍「肛門嚢腺癌」

当院では毎日のように日常ケアとしてわんちゃんの肛門腺絞りを行っています。
今回は肛門腺絞りの際に病気が見つかり、早期治療を行うことができたシーズーのシーちゃんのお話です。当院でトリミングを行った際のシーちゃんのお写真です。

シーちゃんは毎月の健診の際に肛門腺絞りを行っているのですが、元々指を肛門に入れて直接触らないと肛門腺が絞りづらい体質でした。
ある日いつもと同じように指を入れると肛門嚢の近くに4mm大のできものが見つかりました。そのできものを針で刺して細胞を顕微鏡で確認すると、肛門嚢腺癌という腫瘍が疑われました。

肛門嚢腺癌は肛門嚢の近くに発生して目に見える大きさになるまで気づかれづらく、肛門に近いリンパ節に転移して排便ができなくなってしまう可能性もある悪性腫瘍です。一方で、早期に治療してあげることで年単位の生存が期待できる進行が遅い腫瘍でもあります。
幸いシーちゃんはCT検査で肺やリンパ節への明らかな転移が認められず、手術によって腫瘍を完全に切除することができました。

(写真はクリックで大きくなります)


今は再発やリンパ節への転移がないか定期的に健診を行っているところですが、先月の16歳の誕生日も無事に元気いっぱいで迎えることができました。

今回は肛門腺が絞りづらいというシーちゃんの体質のおかげで悪性腫瘍の早期発見・早期治療を行うことができました。肛門嚢腺癌が進行するとお尻の片側がふくらんだり便が細くなるという症状がみられます。何か気になることがありましたらいつでもご相談ください。

副院長
河村