動物の眼科 第8回 慢性緑内障

お久しぶりです。
泉南動物病院 眼科担当獣医師の伊原です。
今日は慢性緑内障のお話しです。

 

緑内障とは?

目の中には眼房水という水が満たされており、この水により目の硬さや大きさが保たれています。
緑内障とは、眼房水が溜まりすぎ、水の圧力(眼圧)が上昇する病気です。
それに伴い、激しい痛みがおこり、視神経や網膜が障害されると眼が見えなくなります。

緑内障は、発症してからの経過と状態によって 急性緑内障慢性緑内障に分けられます。

<急性緑内障>
病気の発症から日が浅く視覚のある、または視覚回復の見込みのある緑内障。
視覚はダメージを受け続けると元に戻らなくなるため、なるべく早く眼圧を下げる必要があります。眼圧を下げるために、点眼による内科治療に加え、点滴や外科手術を実施する場合があります。当院では手術が必要な場合、眼科専門病院をご紹介しています。

<慢性緑内障>
病気の発症から時間が経過し、視覚が失われた緑内障。
慢性的に眼圧が高い状態が続くと、眼球が拡大(牛眼)し、瞬きをしても完全に目を閉じることができず、角膜が障害をうけます。

慢性緑内障の場合、治療の目的は生活の質(QOL)の向上です。
点眼による内科治療がメインとなりますが、次のような場合、外科治療も検討されます。
・内科治療で眼圧を維持することが困難な場合 
・点眼を非常に嫌がる場合
・費用や通院など、内科治療の継続に不安が感じられる場合

具体的に、当院で実施している慢性緑内障の外科治療についてご紹介しますね。

<強膜内義眼挿入術>
目の中の組織を取り、代わりに医療用のシリコンボールを挿入します。
この手術では、角膜などの眼の組織の一部が残ります。そのため眼球の外観は維持され、緑内障点眼薬からは解放されます。ただし残った組織やドライアイのケアのために点眼治療が必要となる場合があります。

<眼球摘出術>
眼球を摘出し、まぶたは閉じた状態になるよう縫合します。
眼を閉じた外観になりますが、点眼薬から解放され、通院回数を減らすことができます。


<硝子体内薬剤注射(シドフォビル硝子体内注射)>
眼の中に少量の薬剤を注入し、目の中の水を作る組織を壊します。
短時間の全身麻酔、もしくは鎮静麻酔により行う処置です。処置を受けた約7割の子で効果が表れ、緑内障点眼薬を減らす、もしくは中止することができるようになります。
効果が強く出ると、目が小さくなる(眼球ろう)可能性があります。

 

【眼科特別診察を受診した子のご紹介】

左目が緑内障となり、視覚を失いました。2か月間点眼による内科治療をおこないましたが、眼圧のコントロールが難しくなり、眼球が拡大してきました。
瞬きをしても完全に目が閉じなくなり、緑内障点眼薬の副作用もあり、目の表面(角膜)が荒れてきました。
そこで、ご家族と相談のうえ、シドフォビル硝子体内注射を行うことになりました。
15分程度の鎮静麻酔を行い、処置が行われました。

術前の眼圧は69(正常は15以下です)です。
術後の眼圧は測定できないぐらいまで下がりました。術後は炎症を抑える点眼薬を使用しました。
その後、眼圧が再び上昇することはなく、徐々に緑内障点眼薬を減らしていきました。
術後5か月目には、若干眼が小さくなってきていますが、充血も改善し、すべての点眼薬をやめることが出来ました。

慢性緑内障には色々な治療の選択肢があります。長く付き合う病気だからこそ、わんちゃんの性格や生活環境に合わせて、負担の少ない治療を選択してあげたいと思っています。
現在治療中で悩みのある方は、お気軽にご相談ください。

【お知らせ】
当院では、光本恭子先生による眼科特別診察を実施しています。
現在予定している日程は、2月22日(金)です。
眼科特別診察は、当院が初診の患者様でも受けることが出来ますので、まずはお電話でお問い合わせください。
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*緊急を要する症状の場合、事前に伊原の診察をお勧めすることがございます。
ご了承ください。

獣医師 伊原