生まれつきの治らない脱毛症 黒色被毛形成異常症 とは

こんにちは。皮膚科担当の横井です。

 

症例

生後9か月のオスのチワワちゃん。

ペットショップで購入した時には問題なかったが、生後4か月から脱毛が始まったとのことで、かかりつけ医の先生からご紹介いただき来院されました。
生後4か月から脱毛が始まったときから、何度かペットショップにも相談に行かれたとのことですが、「毛の生え変わりの時期なので、もうすぐ生えてきますよ。」と言われるばかりで、全く生えてこず心配されて、かかりつけ医に相談されたとのことです。

聞くところによると、もともとこの子はブラック&ホワイトの被毛だったようで、ブラックの毛の一部のみ脱毛しているとの事でした。



脱毛の経緯、皮膚検査より黒色被毛形成異常症と診断しました。

黒色被毛形成異常症は2色以上の被毛で構成される犬の黒色被毛に脱毛が認められる疾患です。
また、同じ原因で起こる淡色被毛脱毛症という皮膚病は、ブルー、フォーンの被毛で構成される犬に特異的に起こる脱毛症です。

 

原因

メラノサイトという場所で作られた、毛に色を付けている物質であるメラニンが、不均等に毛に分布されるために起こります。

 

好発犬種

<黒色被毛形成異常症>
ダックスフンド、ビーグル、ジャック・ラッセル・テリア、ボーダー・コリー、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、パピヨン

<淡色被毛脱毛症>
ドーベルマン・ピンシャー ミニチュア・ピンシャー ダックスフンド ヨークシャー・テリア チワワ イタリアン・グレーハウンド

 

症状

毛の中のメラニンの分布が不均等なため、生えてきた被毛は非常にもろく、根元からポキポキと折れてしまうため、その部分は毛が生えていないように見えます。3~12ヶ月齢までに発症することが多いようです。

 

治療

生まれつき、毛そのものが折れやすいのが特徴であり、症状を抑制する効果があると考えられる薬はありますが、完治させるのは難しい病気です。
被毛自体が弱いので、毛に負担がかかるブラッシングなどのお手入れはできるだけ避け、シャンプーの際にもゴシゴシしないよう優しく行うことが必要です。また、脱毛部位は皮膚がむき出しの状態のため、乾燥、紫外線、外部刺激に対してデリケートです。乾燥に対して保湿剤などのスキンケア、日焼け止めなどの紫外線対策、外的刺激に対しては服などを着せることを検討してください。

ご家族の方には、皮膚への細菌感染や、体の中の不調で毛が抜けているわけではないことを説明し、
変わらぬ愛情を注いであげてくださいとお伝えいたしました。

わんちゃん・ねこちゃんの脱毛などが気になる際は、いつでも当院にご相談ください。

皮膚科担当獣医師 横井愼一