動物の眼科 第7回 眼瞼腫瘤
2023.06.17
お久しぶりです。
泉南動物病院 眼科担当獣医師の伊原です。
今日は眼瞼腫瘤のお話しです。
眼瞼(がんけん)とはまぶたのことです。まぶたにできる腫瘤(できもの)は、炎症や腫瘍など様々ですが、犬では良性腫瘍が、猫では悪性腫瘍の割合が多いと言われています。
まぶたに腫瘍ができるメカニズムは、詳しくは分かっていません。
・良性腫瘍・・・マイボーム腺腫、良性黒色腫、乳頭腫など
・悪性腫瘍・・・悪性黒色腫(メラノーマ)、扁平上皮癌、肥満細胞腫など
腫瘍と似た症状が現れるものとして、麦粒腫(ばくりゅうしゅ)や霰粒腫(さんりゅうしゅ)があります。人でいう「ものもらい」のことです。
麦粒腫:瞼にあるマイボーム腺という分泌腺に細菌が感染し、腫れや赤みを起こす病気です。
霰粒腫:マイボーム腺の中に分泌物の塊ができてしまい大きくなったものです。
<マイボーム腺腫>
<麦粒腫>
腫瘤が大きくなり、破けると出血します。また、腫瘤が角膜に接触し、角膜が傷つくと痛みが生じます。その際には、以下の症状が見られます
・目をしょぼしょぼさせる
・片目を閉じる
・涙が増える
・充血する
眼瞼に発生した腫瘤に対する基本的な治療法は、外科的手術です。
腫瘤が大きくなればなるほど、手術の方法も異なり、難易度も上がります。
ここからは当院の眼科特別診察を受診した患者さんをご紹介します。
写真はポメラニアンの女の子です。
<初診時>
上のまぶたにできた腫瘤が1ヵ月で急に大きくなったということで来院されました。
幸い腫瘤はまぶたの内側部分に大きく張り出しておらず、角膜を傷つけるには至っていませんでした。
ただ腫瘤が大きくなりすぎており、腫瘤を楔形に摘出し、縫合するだけでは、眼が小さくなったり、瞼の機能が維持できない可能性がありました。そこで目尻側を切開し、瞼を延伸する手術法を併用しています。
診断:悪性黒色腫
<手術直後>
<手術1ヶ月後>
術後の経過は良好で、腫瘍の摘出状態も良好でした。
まぶたの機能は維持したまま、再発も認められていません。
獣医師 伊原