ミニチュアダックスフンドの4年間治らない外耳炎と皮膚病
2020.11.24
ミニチュア・ダックスフントのアトピー・アレルギー、外耳炎などかゆい皮膚病の治療に力を入れている泉南動物病院 皮膚科担当獣医師 横井愼一です。
さて今回の症例は、1歳の時から外耳炎を伴うアトピー性皮膚炎のミニチュアダックスフンドで5才の男の子です。
お話をお伺いすると、
・1歳の時から左右の耳に慢性の外耳炎があり、2歳からは膿皮症になった。
・その後は1日中体をずっとなめたり噛んだりしている。
・アレルギー検査をしたが何も結果が得られなかった。
・耳からずっと耳だれがあり首を振っており、治らない。
・ウミから緑膿菌が検出され、抗生剤を飲んだら泡を吹いた。
ということでした。
・ミニチュアダックスフンド
・アポキルが効かない
・耳の緑膿菌
・治らない外耳炎
治療前です。
特に、脇とお腹に脱毛と赤み、脱毛が認められます。
脇やお腹は皮膚が厚くなって、象のようにシワシワになってますね。
特にここは痒みが強く、ずっとなめたり噛んだりしていたようです。
また、フケも多く診察台があっという間に真っ白です。
特につらそうなのが耳からのウミ。
口の周り、肛門にも痒みがあり、ガサガサしています。
初発は1才なので食物アレルギー、アトピー性皮膚炎が考えられました。
なんと外耳炎は4年の熟成モノです。
皮膚検査では、マラセチアの二次感染が認められたので抗真菌剤と抗真菌シャンプーを処方し、お家での3日に1回の抗真菌シャンプーと抗真菌剤及びステロイドの内服薬をお願いしました。
発症年齢、口や肛門の痒みもあることから食物アレルギーも疑い、食事歴から今まで食べたことのない蛋白を使用したフードを処方しました。
一番ひどかった耳の治療として、一般的な耳洗浄ではできない麻酔下での耳の内視鏡(オトスコープ)を2回行い外耳を根気よく洗浄し、耳垢を取り除きました。
鼓膜は変性していたものの、幸い破れていませんでした。
皮膚のかゆみが収まった1ヶ月後からは、目の充血がひどくなり
結膜炎が認められました。こちらもステロイドの点眼薬を処方しています。
オトスコープと自宅でのスキンケアの管理が功を奏し、2ヶ月後にはほぼ痒みのない状態にまで持っていくことができました。
4ヶ月後の現在です。
脇や、お腹も発毛が認められます。
しばらくは、薬なしで全く問題がなかったようですが、食事内容を処方食から元のフードに戻したところ、症状が少し出たようです。これで、食物アレルギーは確定です。
更に、ハウスダストマイト(家の中のホコリにいるダニ)のIgE抗体検査を行ったところ、陽性反応が認められました。これで、アトピー性皮膚炎も確定です。
4年間治らなかった外耳炎も、2回のオトスコープで美しい耳に戻りました。
また、被毛もツヤが戻りました。
● 診 断 名 ●
今回の症例ですが、食物アレルギーにアトピー性皮膚炎が併発していました。
外耳炎や結膜炎はいずれも、アレルギーが根本的な原因だったと考えられます。
現在、初診から6ヶ月ですが、痒みが抑えられる程度の少しのステロイドを服用しながら、来年のシーズンに向けて減感作治療を開始しました。
来年は、体質改善を行いステロイドをなるべく減らす、できればステロイドから離脱できることを期待したいと考えています。
ご家族は4年もの長期間、体や耳から異臭があり、夜中もキュンキュン苦しそうに鳴きながら耳を掻くので、本当に辛かったそうです。
また夜も落ち着いて熟睡できず、この子も一緒に寝ているお母さんも睡眠不足が続いていたとのことです。
耳も皮膚も良くなった今は、お母さんもこの子もぐっすり眠れるようになったと喜びの声を頂きました。
愛犬の痒みがなくなることで、ご家族も笑顔になる、ということを実感し、
いまさらですが、皮膚科の獣医師で良かったと思う瞬間でした。
院長 横井