犬の含歯性嚢胞

今回も歯科疾患について書いていこうと思います。
突然ですがクイズです!ワンちゃんを飼われているご家族の皆様はぜひ考えてみてください。
大人の犬の歯は全部で何本あるでしょうか?
知っているようで意外と知らない方も多いのではないでしょうか。
うちの子普通より歯が少ない?と思った時に役に立つ内容になればと思います。
歯石や口臭などと比較して、意外と気にされない歯の本数ですが、悪さをする可能性がある隠れた歯が歯肉の中に存在しているかもしれません。
そんな隠れた歯が原因になる病気を一つ紹介したいと思います。

ちなみに正解は42本です。

<病態>
永久歯萌出の時期に正常な萌出が起こらずに発生するものです。
萌出異常の過程で遺残した上皮細胞が嚢胞化(液状内容物を入れた病的嚢状構造)したもので、通常嚢胞内に埋伏歯(萌出していないのに歯)の歯冠が存在しています。
ただの液体を溜めた袋でしょと嚢胞を放っておくと、嚢胞に圧迫された顎骨の吸収、骨折を引き起こしてしまう可能性もあるので軽視できません。

<診断・治療>
診断はまずは口腔内の視診・触診です。
歯肉の半球状の膨隆(触ると波動感や羊皮紙様感あり)、歯の変異、歯の数(未萌出歯の可能性)の確認を行います。
歯肉の膨隆部位に歯がなければレントゲン検査を実施します。
レントゲンでは境界明瞭な骨透過像の確認、歯と嚢胞の位置関係の確認(埋伏歯を含む)を行います。
CT検査を行うとレントゲン検査よりも正確で詳細な情報を得ることができますが実施可能な施設は限られます。


治療はまず嚢胞壁の剥離切開を行い、埋伏歯を抜歯し、その後嚢胞壁の摘出(嚢胞壁の上皮の完全な切除が必要であり、残存している場合は再発の可能性あり)を行います。そして最後に歯肉粘膜フラップの作成・縫合を行い閉創して終了です。


今回は犬の口腔内の病気を1つ紹介しました。埋伏歯が原因になる病態です。つまり永久歯への生えかわりの時期にしっかりと全ての歯が萌出しているのか確認しておくことが重要になります。
歯が少ないけど埋伏歯はなく、本当に生まれながら歯の本数が少ない(欠如歯)子もいます。埋伏歯も欠如歯も外からの見た目は変わりません。しかし歯が歯肉内で埋まっているのか、本当に存在しないのかはレントゲンを撮ってみないとわかりません。
不妊手術などで麻酔をかける場合は歯の状況もしっかりみてもらいましょう。そして必要があればレントゲンを撮りましょう。

ご自宅のわんちゃんの歯の本数を数えてみてください。42本より少なくありませんか?うちの子はどうなんだろう?気になる方は一度ご相談ください。
もちろん歯の本数以外のお口のお困りごともいつでもお気軽にご相談していただければと思います。

獣医師 三田