猫の破歯細胞性吸収病巣
2022.06.10
最近暑くなってきましたが、ご家族の皆様も動物さんたちも元気にお過ごしでしょうか。
今回は比較的診察する頻度が高いと感じる猫の口腔の病気を1つ紹介したいと思います。
猫の破歯細胞性吸収病巣
歯質の吸収崩壊病巣であり痛みを伴います。通常は歯頸部から始まることが多く歯冠部、歯根部にも進行していき病変が拡大していきます。この歯質の吸収は歯冠が破壊されてなくなるまで、あるいは歯根が完全に吸収されるまで続きます。
破歯細胞により歯質が吸収され欠損が起こりますが、なぜ破歯細胞が活性化するのかは明確になっていません。したがって有効な予防策もないのが現状です。
発生頻度は40%程度であり、加齢に従い増加することが報告されています。発生部位に関しては第3前臼歯での発生が最も多く、複数本罹患歯があることも少なくありません。
ウェットフードを食べているこの方が、ドライフード食べている子よりも発生頻度が高かったという報告もあるので頭の片隅に置いておいてもいいかもしれません。
・食べるスピードが遅くなった/食べ方が変わった
・よだれが多い
・歯ぎしりをしている
・歯磨きや口周りを触るのを嫌がる
・歯と歯茎の境目が赤い/血が出ている etc
上記のような口腔内の痛みや不快感に起因した変化がよく見られますので、家でこれらを参考に変化を見逃さないようにしてみましょう。
特徴的な歯頸部の肉眼所見を認めればそれだけで診断に近づきますが、基本的に診断はレントゲン検査で行います。従って歯科レントゲンを有している動物病院で診断・治療を行うことが推奨されます。上述の通りこの病態の根本的な原因はわかっておらず、また痛みや不快感を伴い、歯が完全に吸収されるまで続きますので、治療は基本的に抜歯術が選択されます。この治療の意義は罹患歯の消失による痛みの解消です。
下の写真は実際に当院で抜歯を行った猫ちゃんの罹患歯の写真とレントゲン画像です。この症例は抜歯後食事をがっついて食べるようになったそうです。
今回は簡単に猫の口腔内の病気を1つ紹介しました。家でのチェックポイントで気になる点があればお気軽に相談してください。気にして見てみると実は食事スピードが遅くなっていたり、食いつきが悪くなっていることに気づくこともありますので一度チェックしてみてください。また今回書いていませんが口臭も歯周病の大事なチェックポイントですので気にしてみてください。何か気になる点があればお気軽に当院までご相談ください。
他にも口腔内の病気はありますので歯科検診もぜひお申し付けください。
獣医師 三田