猫の怖い中毒 ユリ中毒

ユリ中毒とは


猫において植物のユリを誤食することによる起こる中毒で、植物全体(花粉、葉、花弁等)が毒になります。猫にとってユリは猛毒で、花びらの一部や葉っぱ1枚の誤食ですら死に至らしめる可能性があります。

ユリ中毒の症状


主な症状は流涎・嘔吐、食欲不振、意識レベルの低下などで、ユリの誤食後1~3時間以内に現れ、6時間程度まで持続します。
これらが治まると一時的な胃腸炎症状であったと思い治療が遅れる場合があります。
しかしユリ中毒で最も恐ろしいのは、急性腎障害による腎不全です。
腎不全に陥ると、尿が作られなくなり、体内の老廃物や毒素が排泄出来ず、尿毒症になり無くなる可能性があります。
ユリ中毒における急性腎障害に陥る毒素量(ユリの摂取量)の正確なデータはなく、たとえ少量であっても積極的な治療を行う必要があります。
無治療の場合の致死率は高く、摂取早期からの医療介入が予後を左右します。

治療


摂取後早期であれば、まずは積極的な消化管除染を行います。
詳しくは催吐処置(吐かせる処置)、毒素吸着のための活性炭の投与、胃洗浄などです。その後は積極的な輸液療法を実施します。
輸液療法を行っても尿の産生・排泄がない(無尿、乏尿)に陥った場合に有効な治療は腹膜透析や血液透析のみとなります。
しかし小動物において血液透析を実施できる施設は限られています。
また透析療法は長期の維持が目的ではなく、尿産生の再開までの処置となります。
無尿期に透析治療を受けることが出来ない場合は尿毒症で亡くなる可能性が高く、一般的に予後が非常に厳しくなります。

最後に

 
ユリは身近にある植物で、知らなければ猫に毒ともわかりません。
少量の摂食でも命を落とすことのある非常に怖い中毒です。
猫を飼われているご家族の皆様は家にユリを持ち込まないように気をつけましょう。
また誤って誤食してしまった場合は、どんなに少量でもすぐに動物病院に相談するようにしてください。

獣医師 三田